親が認知症の場合でも実家を売却できる?実家を売却する手順をご紹介!

親御さんが認知症になって在宅介護が難しい場合、介護施設の入居も考えるもの。
介護施設に入居するとなれば、実家が不要になるという方も多いのではないでしょうか。

とは言え、実家の名義は親。
「認知症の親でも実家を売却できるのか」「親の代わりに自分が売却できるものなのか」といった疑問を抱きますよね。
そこで今回は、親が認知症になっても実家の売却はできるのかをご紹介します。

□親が認知症になっても実家の売却はできる?

結論からお伝えすると、親御さんが認知症になった場合、親御さん自身が実家の売却はできません。
実家を売却することは、法律行為の1つなので、売却する当事者が意思表示したときに意思能力を有していなければ、売却という法律行為は無効となります。
これは、民法第3条2項に「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」と明記されています。

□親が認知症の場合はどのように実家を売却すれば良い?

*亡くなって相続した後に売却する

「今すぐ実家を売却したい」という意思はない場合は、親が亡くなった後に、ご自身が実家を相続することで正式に所有者になれるので、そのタイミングで売却するという方法があります。
とは言え、それまでの期間は売却できないので、空き家を管理することになります。
空き家管理は、費用がかかったり、空き家状態の間にトラブルが発生したりする可能性があります。
また、空き家状態が長く続けば続くほど、家が劣化して売却しにくくなります。

*成年後見制度を利用して売却する

現実的に考えると、実家を相続するまで売却を待つのは難しいと言えます。
そこで、認知症の方をはじめとした判断能力に欠ける方のために、「成年後見制度」という制度を利用することをおすすめします。
成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」があるので、判断能力に欠ける場合は、「法定後見制度」を利用します。
この制度を利用して「成年後見人」になれば、所有者でなくても実家を売却できます。

しかし、成年後見制度で重要なのは、「意思能力に欠ける人のためのサポートを行う」ことです。
成年後見人は、衣食住のためにお金が必要ですよね。
そこで、成年後見人になって実家を売却する目的が、得たお金を「自分のために」利用するというものでは売却できません。
つまり、あくまでも「認知症になった親のために使う」ことを目的として実家を売却するという前提でなければいけません。

□法定後見制度を使える場合の実家を売却する手順とは?

成年後見制度を利用すれば、実家を相続しなくても売却できます。
では、「法定後見制度」を使う場合、どのような手順で実家を売却するのでしょうか。

1.「成年後見制度開始」の審判を申し立てる

後見人の候補を決めた後、申し立てに必要な書類や費用を準備します。
そして、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に審判の申立てを行います。

申し立てに必要な書類は以下の通りです。

・申立書(定型の書式は家庭裁判所に行けば無料でもらえます)
・申立人の戸籍謄本1通(本人以外が申し立てるとき)
・本人の戸籍謄本、戸籍の附票、登記事項証明書、診断書各1通
・成年後見人候補者の戸籍謄本、住民票、身分証明書、登記事項証明書各1通
・申立書付票
・本人に関する報告書(用意できれば)

2.家庭裁判所により審理されて必要があれば医師の鑑定を受ける

申し立て後、裁判所の職員が申立人や後見人候補者、親御さんからヒアリングを行います。
全てのケースではなく、親御さんの判断能力について鑑定が行われるケースもあります。

3.法定後見人が選任される

裁判所が後見人候補者の中から最も適任と判断した成年後見人に選任します。
事情によって、候補者以外の弁護士や司法処理、社会福祉等の第三者が後見人に選任されることもあります。

4.不動産会社と契約を結んで実家を売却する

選任された後見人が不動産会社の選定を行なって、選定した不動産会社と媒介契約を結びます。
不動産会社を選ぶ際は、あらかじめ売却価格の相場を調べておくことをおすすめします。

5.居住用不動産の場合は裁判所の許可を受ける

売却する実家が「本人居住用不動産」である場合、裁判所の許可が必要になります。
もし、許可を得ずに売却活動を行なった場合、その取引は無効になるので注意してください。
「本人の非居住用不動産」である場合は、裁判所の許可は不要ですが、生活費や介護医療費の確保など、正当な理由が必要となります。

また、とても低い価格での取引を行なった場合、法定後見制度における本人保護の観点から認められない可能性があります。
居住用・非居住用に関わらず、実家を売却するのであれば、事前に裁判所に相談することをおすすめします。

6.買主と売買契約を結ぶ

裁判所の許可を得て、後見人が親御さんを代理して、買主と売買契約を結びます。

7.決済・引越し

契約が結べたら、売却代金の決済を経て引っ越しを行ないます。

□まとめ

今回は、親が認知症の場合でも実家を売却できるのかについてご紹介しました。
親御さんが認知症なのであれば、親御さん本人が実家の売却はできません。
今すぐ売却したい場合は、「成年後見制度」の利用を考慮してみてはいかがでしょうか。

監修者情報

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アーバンネットワーク株式会社
松本 幸治

代表挨拶